逃げる 

「オカマなんて、現実から逃げてるだけじゃない!
自分が男だっていう事実から、目を背けたいだけじゃない」

頭が真っ白になっていた。
人を傷つける言葉は、言っている本人にも突き刺さる。
私の血は何色だろう。
しかしその血の色が何色であろうと、
今彼が着ているキラキラした装飾の服の方がきっと鮮やかだ。
そして彼の目の方が、とても澄んでいるに違いない。
そして彼の口からもれる声は、とても穏やかで
私の傷口はみるみるうちに塞がって行くのだ。

「現実から逃げなかったから、オカマになったのよ。
自分に正直に生きようと思って、いろんなものと戦った。
そして今私は、とても幸せで、満足。
これからも戦って行くわ。
あなたは、そうやって逃げて行くの?」

ああだからこの人は
周りから浮き出て見えたのだ。
あの時、あの商店街で
私が彼を見つけたのは、
その格好が奇抜だったからじゃなかった。
彼は輝いていたのだ。
周りの人たちよりも何倍も
輝きを放っていたからなんだ。

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